はじめに
在庫管理は、企業活動の中でも特に重要な業務の一つです。小売業、製造業、卸売業など、商品を扱うビジネスにおいて在庫管理は欠かせません。商品が不足すれば販売機会を逃し、余剰在庫が増えれば保管コストがかかる。こうした課題を解決するため、多くの企業では在庫管理システムを導入しています。
その中でも、Microsoft Excel(エクセル)を使った在庫管理は、特に中小企業や個人事業主にとって非常にポピュラーな方法です。すでに業務でExcelを使用している企業は多く、コストもかからないことから、簡易的な在庫管理システムとして広く活用されています。
この記事では、「在庫管理システム」という観点から、Excelを用いた在庫管理のメリットとデメリットについて詳しく解説します。これからExcelで在庫管理を始めたい方や、すでに運用しているものの課題を感じている方にとって、非常に役立つ内容となっています。
Excelで在庫管理を行うとはどういうことか?
Excelでの在庫管理とは、Microsoft Excelの表計算機能を活用して、商品名、品番、在庫数、入出庫日、発注点などをスプレッドシート上で管理することを指します。Excelの行や列に必要な情報を入力し、関数やマクロを使って在庫数の自動計算や警告表示などを行うことができます。
たとえば、「現在庫」「発注点」「入荷予定日」「ロケーション」などを項目として作成し、在庫が発注点を下回った場合にセルが赤くなるよう条件付き書式を設定することも可能です。また、フィルタやピボットテーブルを使って在庫分析や棚卸データの抽出を行うこともできます。
Excelを在庫管理に使うメリット
1. 導入コストがかからない
最大のメリットは、導入コストがほぼゼロであることです。Microsoft Officeをすでに利用している企業であれば、新たなソフトウェアを購入する必要がありません。クラウド型やパッケージ型の在庫管理システムには初期費用や月額費用が発生するため、コストを抑えたい企業にとってExcelは非常に魅力的な選択肢です。
2. 自由にカスタマイズできる
Excelは非常に自由度が高く、業種や業務内容に応じてレイアウトや関数を自在に設計することができます。市販の在庫管理ソフトでは「この項目はいらない」「この情報が足りない」といった不満が出ることもありますが、Excelであれば必要な項目だけを自分たちで自由に設計できます。
3. 操作が簡単で誰でも扱える
多くの人が日常的にExcelを使用しているため、特別なITスキルを持たなくても扱えるという利点があります。特に小規模な組織では、IT部門が存在しないことも多く、誰でも操作できるExcelは非常に有用です。また、関数やマクロを学習すれば、ある程度の自動化も可能になります。
4. 他の業務データと連携しやすい
Excelで作成した在庫データは、売上集計や発注書、請求書など他の業務資料とも連携しやすいのが特徴です。同じファイル内に複数のシートを作成することで、データの一元管理が可能になります。また、CSV形式で他のシステムとデータをやり取りすることも容易です。
5. オフラインでも使用できる
Excelはローカルアプリケーションであり、インターネット環境がなくても使用できます。倉庫や店舗など、Wi-Fi環境が整っていない場所でも安心して利用できるのは大きなメリットです。クラウドシステムと違って通信トラブルによる作業中断のリスクが少ない点も評価されます。
Excelを在庫管理に使うデメリット
1. 入力ミスが起こりやすい
Excelの在庫管理は基本的に手入力が前提となるため、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。特に、複数人が同じファイルを操作する場合には、上書きミスや保存忘れといったリスクも伴います。結果として、実際の在庫数と帳簿上の在庫数にズレが生じることがあります。
2. データ量が増えると処理が重くなる
Excelファイルはデータ量が増えると動作が重くなり、操作性が悪化します。商品数が数百、数千点に増加すると、検索や並び替え、グラフ作成などの処理速度が低下し、業務効率に支障をきたす場合があります。ファイルが破損するリスクも高まります。
3. リアルタイム更新が困難
Excelは基本的にローカルファイルとして管理されるため、リアルタイムでの在庫更新が難しいという課題があります。複数拠点で商品を扱っている企業では、情報共有の遅れによって在庫数が正確に把握できなくなる可能性があります。
4. アラート機能や自動化に限界がある
Excelには在庫が一定数を下回った際に自動で通知するような高度なアラート機能がありません。条件付き書式で警告色を表示する程度は可能ですが、メール通知や自動発注といったシステム連携機能は実装が難しく、管理担当者の目視確認に頼らざるを得ません。
5. セキュリティとバックアップに不安がある
Excelファイルはパスワード保護やアクセス制限などのセキュリティ対策が十分とは言えません。万が一、パソコンの故障やウイルス感染が発生した場合、重要な在庫データが失われる危険があります。定期的なバックアップを取っていないと復旧は困難になります。
Excelで在庫管理を行う際の注意点
Excelで在庫管理を行う際には、以下の点に注意すると効率的かつ正確な運用が可能になります。
- ファイルは常にバックアップを取り、バージョン管理を行う
- 操作マニュアルを作成し、全スタッフが同じルールで運用する
- 誤操作を防ぐために保護機能(シート保護・セル保護)を活用する
- データ容量が膨らみすぎないよう、定期的に過去データを整理する
- 月次や週次で棚卸を実施し、帳簿との整合性を確認する
どのような企業にExcel在庫管理が向いているか?
Excelを使った在庫管理は、以下のような企業や状況に特に向いています。
- 管理対象の商品数が100点未満である
- 出荷・入荷の頻度がそれほど多くない
- 専門のIT担当者がいない
- 予算的にシステム導入が難しい
- 一時的・短期的なプロジェクトで在庫を管理したい
一方、以下のような企業にはExcelは不向きであり、専用の在庫管理システムを検討すべきです。
- 複数拠点や倉庫があり、在庫の一元管理が求められる
- 毎日の出荷件数が多く、リアルタイムでの反映が必要
- 分析や需要予測など高度なデータ処理を行いたい
- 他の業務システム(販売管理・会計システム)との連携が必要
- 情報漏洩やセキュリティ面の対策が求められる業種
まとめ
Excelを使った在庫管理システムには、導入コストが安く、誰でも扱いやすく、柔軟にカスタマイズできるという大きなメリットがあります。特に小規模事業者にとっては、最初の在庫管理ツールとして非常に適しています。
しかし、業務が拡大するにつれて、入力ミスやファイルの管理、リアルタイム性の欠如、セキュリティリスクなどのデメリットが顕在化します。そのため、事業の成長とともに、より高度な在庫管理システムへの移行も視野に入れるべきでしょう。
「在庫管理システム」の選定においては、自社の業務量・予算・将来の拡張性を総合的に判断することが重要です。Excelはあくまでスタート地点として、次のステップへの橋渡し役として活用するのが理想的です。
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