在庫管理と一口に言っても、業種によって求められる業務の内容や方法は全く異なっています。
また、業種によっては在庫として管理すべき対象となる物自体が、まったく違っている場合もあります。
例えば、小売業の場合だと、顧客に販売するための商品が、管理する対象の”在庫”となり、これらを在庫管理システムで管理します。
この商品＝在庫は常に一定の数を過不足のない状態を維持する必要があり、商品または在庫が足りなくなってしまえば利益も得られなくなってしまいます。
一方で、製造業の場合は、工程が進むに伴って在庫となる対象が変化したりといった特徴もあり、その場面場面や特徴に対応した在庫管理が求められます。
さらには、アパレル・飲料品・食料品・医薬品・土木業・建設業・ネットショッピングなど。
様々な業界で独自の特徴があるように、そのそれぞれの特徴に応じた方法での在庫管理が必要になってきます。
業種別解説！在庫管理の特徴
製造業の在庫管理(原材料・部品・仕掛品・完成品)
製造業における在庫は【原材料(部品)】【仕掛品】【完成品】の3つに分類されることになります。
経営を最適化する為には、各それぞれの在庫をダブつかせることなく、最適かつ良好な状態に保たなければいけません。
その為に必要となる特徴を【原材料(部品)】【仕掛品】【完成品】それぞれで解説していきます。
【原材料(部品)】
製品を製造するにあたって【原材料(部品)】というものは必要なものです。
この【原材料(部品)】がなければ、製品の製造が停滞してしまうことになってしまう為、発注リードタイムを考慮した最適な状態を保つ必要性があるものです。
【仕掛品】
部品が完成品になる途中の物のことを【仕掛品】といいます。
完成品とは違って、このままでは販売することで利益に繋げることも出来ません。
しかし、部品とも違っており、これから別の製品に加工をすることも出来ない、いわば中途半端な状態の物です。
その為、最もキャッシュへと変えづらい状態である為、最小限の在庫数に抑えることが非常に重要となっています。
【完成品】
【完成品】とは、販売可能となった状態の品物のことです。
【完成品】が不足または欠品してしまうと、販売機会を損失してしまうこととなり、せっかく得られたはずの利益をみすみす逃してしまうこととなります。
ですが、売れ残って長期在庫と化してしまった製品は、経年劣化を伴い価値を失ってしまいます。
その為、余剰在庫には注意が必要となっています。
小売り・通販の在庫管理
小売業での在庫管理となると、管理対象の品目が多くあるのが特徴となっています。
人の手で管理を行うことは難しく、多くの場合はPoint Of Sales(POS)システムを利用することがほとんどです。
POSシステムを活用することで、販売情報をリアルタイムで記録し、管理することも出来るようになりました。
そうしてシステム上に蓄積されたデータを基に需要を予測し、その予測に合った量を発注するというのが一般的となっています。
この予測の精度が高ければ高いほど、適正在庫を保てる可能性もグっと上がります。
さらに通販ともなると、小売店よりも多くの顧客を相手にすることになる為、実店舗と比較してもさらに膨大となる量の品目を取り扱うのが一般的です。
また、注文だけでなくキャンセルによる在庫の増減が激しいこともあり、よりリアルタイムでの販売状況管理が求められるようになっています。
近年では市場のニーズも大幅に多様化が進んでいることもあり、これも在庫管理の重要性、そして負担の増大に拍車をかける要因の一つとなっています。
アパレル業の在庫管理
アパレル業での在庫管理業務には、業界特有となる３つの特徴が存在します。
まずは【ライフサイクルが短い】という特徴です。
アパレルは季節や流行に大きく左右されがちなものです。
このことから、統計や過去のデータを基にした機械的な需要予測が困難となります。
その為、不良在庫の発生リスクが高いという側面があります。
次の特徴となるのが、取り扱う【品目の多さ】です。
元よりアパレル業では品目が多いものです。
同じデザインの商品だとしても、カラーやサイズがそれぞれ違うだけで、別の商品として管理する必要があります。
このことから管理品目が膨大となることは必然でもあります。
最後に【返品リスクが高い】という点。
商習慣として、アパレル業で既に出荷した商品が小売店から返品されることも少なくはありません。
ただでさえ、需要の予測が難しいことも相まって、大きなリスクとなっています。
薬局の在庫管理
薬局では主に2つの在庫管理の課題を抱えています。
まず一つめが【需要が少ない商品であっても在庫が必要】であるということ。
薬局では、そんなに売れないから、また動きが少ないからといって特定の医薬品の取り扱いを止めることも出来ません。
利益に繋がりづらいとしても、多種多様な医薬品の在庫も確保しておく必要があります。
そして【有効期限】があるという点。
食品と同様に、医薬品も期限内に販売する必要性があります。
しかし、食品とは違い、期限が近づいているからといって値下げをして売るわけにもいかないものです。
薬局には品揃えを充実させるということが求められるだけではなく、廃棄リスクも高くなっています。
高額な医薬品も多いこともあり、経営圧迫の恐れもある為に要注意となっています。
飲食業の在庫管理
飲食店での在庫管理では、原料となる食材だけを管理すればいいというわけではありません。
加工途中の半製品状態のものであったり、完成した製品も管理をする必要性があります。
この点においては製造業における在庫管理に近しいものとなっています。
とはいえ、製造業とは大きく異なる部分も多々あります。
まず、食品に関しては賞味期限に注意をする必要があります。
その為、在庫は”先入れ先出し”を徹底の上で、商品ごとに管理する環境をよく考えなければならないというのが特徴です。
それは温度や湿度だけではなく、ウイルスや細菌への感染脅威も考慮する必要性があります。
その他には、ストローやレジ袋といった消耗品の在庫数も把握することにもなります。
土木・建設の在庫管理
土木や建設において、着手したものの売り上げが上がっていない工事に費やした費用のことを”在庫”と呼び、具体的な内容としては工事を行うにあたり購入した資材などが該当します。
倉庫に保管をするわけではない物ではありますが、売上に変わるまではそれらの資材などは在庫とみなして管理します。
工事現場のことは工場、完成前の建築物は仕掛品、そう考えると製造業と同じように考えられるので分かりやすいのではないかと思います。
常時抱えるような在庫はほぼない為、他の業種のように頻繁な棚卸などは必要なく、厳密な在庫管理も求められません。
その分、管理の不備が発生しやすくもあるので、他業種と変わらず注意が必要です。
また、建築関係の場合は、資材を多めに仕入れたことで出た余剰分を、次の機会に使おうという考えもあります。
しかし時期やタイミングによっては劣化してしまい、結局使えず仕舞い、ということも多々あります。
その為、いつ、何を、どれくらい仕入れたのか。
あるいはそれらをどこに保管したのかといったような基本的な管理が必要となっています。
まとめ
今回は業種によって異なる在庫となる対象や、その管理方法を解説いたしました。
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